歯周病とアルツハイマー型認知症との関係
日本の認知症患者は間違いなく増加傾向にあり、厚生労働省によれば毎年約20万人増加する試算もでており、2025年には5人に1人の65歳以上の方が認知症になるそうです。
認知症にも種類がありますが、全体の認知症の約70%がアルツハイマー病になります。
アルツハイマー病は残念ながらまだ詳細の原因はよく解明されてなく、治療方法が確立されてなくて、自分の努力で治せる病気ではありません。しかし発症原因としてわかっている所もあります。アルツハイマー病はアミロイドβと呼ばれるタンパク質が神経細胞に長い時間をかけて蓄積されることで発症すると考えられています。アミロイドβは本来、細胞の代謝に必要な物質であり、排出されていくものです。アルツハイマー病はその排出がうまくいかなくなり、蓄積されるようになることで脳細胞を障害するようになります。
そのアルツハイマー病と歯周病の関連についてですが、2020年九州大学などの研究チームは歯周病菌が全身に広がることで、アミロイドβの蓄積が促進されることを見出しました。歯周病菌を投与したマウスは、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβが10倍近くも増えて、記憶力が低下するそうです。
ではなぜ歯周病菌によりアミロイドβが増えるのか?
その九州大学の研究チームの研究によると歯周病菌が体内に入ってくると本来免疫細胞は歯周病菌を攻撃して壊滅させて体を守りますが、過剰に歯周病菌が体内にいると免疫細胞が過剰にそれを攻撃してしまうことで炎症が起こってしまいます。その炎症物質が免疫細胞自身を刺激して異常なタンパク質のアミロイドβを作り出します。そのアミロイドβが血液にのって脳内に運ばれ、蓄積されます。
アルツハイマー病の発症促進因子としては他にも喫煙、運動不足、肥満などの生活習慣も関係していることもはっきりしていますが、そのうちの1つとして歯周病があることが判明したということです。
つまり、歯周病の治療、予防(歯科医院の定期的なメンテナンス)を適切に行うことで、認知症の発症や進行を抑えられる可能性があるということです。
その他の明らかになったアルツハイマー病と歯周病の関係を明らかにするデータ
⚪︎残存歯数とアルツハイマーの関係
50歳-70歳の100人以上の方を追跡調査してみると、10本以上の歯を失った方達は、失った歯の数が9本以下だった方達と比較して、明らかに認知機能の低下がみられました。
⚪︎認知症から歯周病へ
8640人の認知症患者とその同数の健常者のその後を比較してみると、新たに歯周病になってしまった方の数は明らかに認知症患者の方のグループである事がわかりました。
これらの知見から、口腔ケアをしっかり行うことで、認知症をはじめとする全身の病気を予防する意識を高めることが重要であることがわかります。
まとめると、歯周病はただ口内だけでなく全身に影響を及ぼす可能性があります。特に、アルツハイマー型認知症の発生リスクを高める可能性があるため、口腔ケアは非常に重要です。皆さんも日々の口腔ケアに気をつけて、健康な生活を送りましょう。